Log

COSMOS 2014

 2014年、何かひとつエピソードを選ぶとすれば、私にとってはこれになります。1980年にアメリカそして日本でもTV放送された、科学番組黎明期の巨星にして金字塔、カール・セーガンの「COSMOS」、その21世紀リブート版がついに放送。数年前から制作のうわさは聞いてたのですが、NationalGeographicChannelで突然放送される事になり大慌てでした。危うく見逃すところだったー!
 以下、ふたつのCOSMOSについて、また、こちらも私の愛するタイトルであるところの"スタートレック"とのもつれ合いについて、とりとめもなく書きたいと思ってます。
 新生2014COSMOSは、ホストをニール・ドグラース・タイソンが担当。時々覗いているBigThinkという動画サイトで、いつも面白い話を聞かせてくれる科学者の方として知っていたのですが、今回セーガンを引き継いでホストを担当と聞いて「あー、あのおっちゃんか!」。エピソードの中でも触れられていましたが、 彼は子供の頃セーガン本人に会っていたのですね。 (こちらはちょっと前に話題になった動画>>)時代は巡り、ホストも黒人の科学者がつとめる事になったわけですが、考えてみれば現在の大統領はオバマ氏。では1980年のCOSMOS放送当時は?と調べてみたところ、ちょうど大統領選挙の年で、11/8の選挙でカーターからレーガンになった。そして11/8はアメリカでも日本でもまさにCOSMOS放送の真っ最中だったことになります(この辺りの記憶は無いです・・)。さらに、そういえばスタートレックでもカーク船長の時代から世代を経てシスコ司令官にたどり着いたわけで、このあたりシミラリティーを感じます。時代の流れ。
 セーガン=>タイソン
 レーガン=>オバマ
 カーク=>シスコ
 本題に戻りまして、COSMOS2014の感想です。1980年版へのリスペクトがいろいろな場面で見え隠れし、エピソード達が新旧でリンクしつつ、最新科学情報もたくさん盛り込まれるという感じでとてもすばらしい番組でした。宇宙カレンダーも美しくアップデート。宇宙の年齢は1980年版では約150億年となってましたが、今回のカレンダーは138億年に。新しい想像の宇宙船は、ややモダン過ぎ?スターウォーズ新トリロジー的なキンピカボディー。過去の世界が床に、未来の世界が天井に映し出されるというアイデアは楽しかった。宇宙の星々の映像は、やはり今日の我々にはもはやすっかり見慣れてしまった感はいなめない、とはいえやはりとても美しい仕上がり。一方気になる部分は、視聴された皆さん達が一様に突っ込んでいる点なのですが、1980年版では実写でがんばっていた時代劇部分が、今回はことごとくアニメになつてしまつている点。予算が出なかったのか?FOXよケチるな!あのCOSMOSなんだぞおい!事の重みが解っとるのかね。もう一つ言うとすれば、カールセーガン版では、冷戦時代当時の世相と、それに対するセーガンの危機感、問題意識が多分に反映されていて、シリーズ全体を通しての重厚な通奏低音となっていました。火星や金星の環境に関する話題や、ドレイク方程式の最後のパラメータ、銀河百科事典などのエピソードも、人類文明存続の危機感という中心テーマと絡めて語られているのです。今回2014年版ではこういったメッセージ性がかなり後退しています。かつての化学汚染の問題や温暖化に関してさらっと触れたり、例の反進化論一派の方々への軽いジャブもあるにはあるのですが、あくまで小エピソード的。このあたりが全体的な食い足りなさ感を醸し出してしまっているのではないかと。FOXというのも若干影響してるのかな・・

 さて、ではその1980年カールセーガンCOSMOSについて若干語らせていただきますと・・
 この伝説のTV番組については、同じような事を語る人が同年代の人たちに非常に多いのですが、以下私事を許していただきたく。理工学部に進学、メーカーで電子回路やIC作りに携わり、独立後もまあどちらかと言えばプログラミング寄りの仕事で食いつなぎつつ現在に至るといった私の人生の方向蛇を、潜在意識下であやつり続ける恐るべき刷り込みプロトコル、オーバーライド不能なナビゲーションプログラム、それがCOSMOS1980です。この恐るべきウイルスは、全13話からなる、当時はほとんど初となる本格的な科学TV番組、宇宙を語るTV番組でした。出会いは偶然でした。学校からの帰り道、たまたま立ち寄った池袋西武デパートで、放送開始直前の番宣用パネル展示のような物がありました。当時は電気製品売り場にAppleIIやCommodoreなんかがおいてあって、ゲームをデモしたりしてたのですが、学生服を着たガキんちょにも触らせてくれて、ピエロとバルーンなんかで遊んだりしてたのです。そんな流れで目に留まったのがこの展示スペース。なんだなんだ?宇宙についての番組?アメリカの?番組の映像の一部が流されていました。かに星雲のパルサーが回っていた。高校1年生の私は、この映像を見た瞬間、完全に心を持っていかれてしまいました。展示場に飛び込んだ。DNAの二重螺旋が動いておる。細菌から人間までの進化が40秒のアニメーションだと?何だこの宇宙カレンダーとか言う物は!以来、放送開始をまだかまだかと待ち続ける日々。朝日新聞での連載が始まった。原作本の抜粋を小さな長細いコラムにした感じの物で、毎回素晴らしいイラスト付き。切り抜いてスクラップし、色鉛筆で絵に色を塗ったりしていました。そして上下二巻のセーガンの原作和訳本が出た。カバー絵は岩崎賀都彰氏(現 岩崎一彰)。CGのない時代、宇宙と言えば岩崎氏と長岡秀星氏。
 そして放送が始まった。ヴァンゲリスのシンセサイザーとともに、オレンジ色の遠方銀河、クエーサーが画面に広がった。夜10時という時間帯、何とも言えない神秘的な感覚に包み込まれる。2時間があっという間。その日から連日の集中放送。一晩に2本づつ、第一部、第二部と称して放送されました。毎回毎回がセンスオブワンダーな映像、音楽、知識の波状攻撃。原作本はTV放送に会わせて毎日順番に読み進めました(学校の授業中にこっそり読んでいた)。当時父親が奮発して買っていたVictorのVHSレコーダーですべて録画。テープ代で小遣いが吹っ飛んだ。その後すり切れるほどなんども繰り返し見ました。最終回の後の特番、ボイジャーの土星接近の生中継?なるものも食い入るように。こちらは今手元には番組の断片の録画しか残っておらず残念。土星の画像の生中継映像とやらは、「残念ながら番組中には間に合いませんでした」的な運びだったと記憶している。小尾信彌先生。
 番組終了後も、いくつかの関連書籍が出版されました。後に原書版のCOSMOSも手に入れ、こちらは番組と対応したカラー図版が満載で、番組内でははしょられた詳しい補足情報がうれしいもの。セーガンのCOSMOS以外の著作も読みました。そしてこの時期辺りから世間ではいわゆる科学雑誌ブームが始まります。現在もしぶとく続いている故竹内均先生の「Newton」、旺文社の「日本版OMNI」(科学雑誌なのにいきなりのアシモフSFで驚)、講談社Quarkなど次々創刊。NASAがスペースシャトルをスタートさせたのもこの時期。

COSMOS 上下巻 図版などは少なく、アメリカ版に比べるとやや寂しい・・


岩崎賀都彰 画集

日本で出版された関連書籍
番組では見た覚えの無いスチル写真などがあったことから、日本語版はかなりカット編集されているのだなあと知ることとなる・・

COSMOS 米国版 番組とリンクしたイラストや写真が満載

カールセーガン著書
左:エデンの恐竜 後に有名になる”宇宙のカレンダー”が登場
右:宇宙との連帯

左:セーガン著書 文庫もの
右:関連書籍としては例えばこんな物も。最初の奥さんリン・マーギュリスとその息子さんドリオン・セーガンの著書。有名なミトコンドリア共生説の、あれです。

VHSテープ Scotch T-120E Videocassette

左:Newton 創刊0号
中:OMNI 創刊号
右:Quark 創刊号

 さて、放送翌年の高校の文化祭、自主企画で視聴覚教室を使わせてもらってCOSMOS上映会を行いました。こんな事を勝手にやるなんて、今だったらしかられるだろうけど、当時はTV番組の録画自体まあまあ珍しい時代だったし、学校の方も自由に、というか気にも留めずにやらせてくれました。結構大勢の人たちが見に来た。そのとき作ったガリ版刷りのパンフレットを今でも保存しています。見返すと、当時NHKで放送されたBBCの科学番組「宇宙を解く鍵」や「宇宙移住計画」の事も書いていて、懐かしい面白い。まだ当時のTVでは、科学番組や宇宙に関する情報番組などはほとんど無く、NHKで海外制作の番組の翻訳版をぽつぽつ流していた程度。上記「宇宙を解く鍵」はそんな中の一つで、量子力学についてのかなり小難しい話を堂々とやっていました。電弱理論や、チャームクオークの発見などの話題。トップやボトムはまだ仮説段階、タウ粒子が未確定だったという時代です。ファインマン本人が経路積分の説明?かなにかをやっていた記憶が・・むろん当時の私に理解できるはずも無く、でもがんばって見ていたんだなぁ。後に番組が書籍化されたものを読んでどんな番組だったのかを知る事が出来ました。同じ時期に、確かNHKの同じ枠で放送された「宇宙移住計画」は、ジェラルド・K・オニールのスペースコロニー構想を紹介する番組。オニールの著書は、その後我々を興奮のるつぼに叩き込むこととなる「機動戦士ガンダム」のネタ本です。(ガンダムは、オニールの「宇宙移住計画」、ハインラインの「宇宙の戦士」、プラス立花隆の「宇宙からの帰還」的なものから出来ている。「宇宙からの帰還」出版自体はガンダムの後みたいですが、エドミッチェル等の事自体はすでに知られていたはず、当時の記憶なので時間の前後が曖昧で、やや自信は無いですが。ついでに、”重力からの開放”うんぬんという部分は、若干ティモシー・リアリーのアイソレーションタンク的なフレーバーが香ります。さらについでに、まさにCOSMOS放送当時の富野氏の仕事が日本初がちスペースオペラのイデオン。主人公の名前がコスモで、”コスモス宇宙をかけぬけて〜”とか言ってまして・・)さて話し戻して、この「宇宙移住計画」、音楽はジャン・ミッシェル・ジャールで、今でも模型のスペースコロニーの映像に会わせて彼の曲が流れていたイメージの断片が思い浮かぶ・・。録画保存しとけばよかったなーとほんとに思う。ジャン・ミッシェル・ジャールはシンセサイザーでLPを作る先駆けの方々の一人で、当時日本では富田勲、NHK シルクロードの喜多郎などが活躍していた時代。(日中友好時代。私の年代の人間からすると、中国と日本が仲悪くなったのなんてつい最近の事なんですが、これを言うとびっくりされる。)そういえば、COSMOSではコマーシャル入りの時にツトム・ヤマシタが使われていたのも思い出される。CMではSONYのモニターにTOTO、ポランスキーの”テス”、ナタキン。 COSMOSでも富田勲の曲が使われていました。しかしなんといっても、COSMOSのシンセサウンドといえばヴァンゲリス。反射率、天国と地獄、スパイラルなどから使用された。その後映画音楽作家として快進撃。ブレードランナー、南極物語、炎のランナー、バウンティー、コロンブス・・・。一方2014リブートCOSMOSの方の音楽、こちらはちょっと控えめになってました。アラン・シルベストリ。カールセーガン原作の映画「コンタクト」の音楽をやっていたという繋がりです。かなり上品な音。

BBC 宇宙を解く鍵 書籍版

ジェラルド・K・オニール スペースコロニー関連書籍

島3号宇宙コロニー


左:COSMOSサントラLP。番組内ではシンセ系の他、ヴェートーベン7番、ショスタコ5番などのクラシック音楽が効果的に使われていた。
右:アメリカ版のDVDですが、日本語の字幕も選択できます。

 さて、では次のお題、COSMOSとスタートレック。
今回のCOSMOS2014の製作総指揮の一人としてブラノン・ブラガが参加しています。彼は何者か。スタートレックのTNG、VGR、DS9、ENT各シリーズにおいて脚本そしてプロデューサーとして活躍したその筋の重鎮です。つまり今回のCOSMOSのVFXパートの手堅さ美しさはスタトレゆずりだったと。スタートレックTVシリーズ自体はENT終了以降長い間中断しており、非常に寂しいのですが、こういう形でブラノン・ブラガと再会することになろうとは。
 思えば、カール・セーガンのCOSMOSが放映された当時、スタートレック界隈の状況はと言うと・・映画版第一作TMP公開が1979、第二作「カーンの逆襲」が1982、ちょうどこの2作で宇宙大作戦復活ムーブメントが大盛り上がりしている時期にCOSMOS1980、という流れになっているわけです。こんなところからも当時の宇宙ブーム、科学ブーム、SFムーブメントが感慨深く回想されます。
 さて、COSMOSとスタートレックとのリンク点について、さらにいくつかのポイントを。COSMOS1980では、セーガン自身が計画の企画、指揮に携わったボイジャー探査機が大きく取り上げられていたのですが、スタトレ映画第一作では物語のキーであり、また後の映画でクリンゴンのバードオブプレイの射撃の的になったりしています。



一方COSMOS2014では、想像の宇宙船でヴォイジャーに並走するという泣かせるいいシーンがありまして、「スタートレック的だなー」と思わずにはいられない一場面でした。さらに、ボイジャーと言えば、セーガンが発案のゴールデンレコード:宇宙へ向けて送られた地球からのメッセージ:が有名ですが、この中にセーガンの息子さんのニック·セーガンくんの「地球の子どもたちからこんにちは」という声が入っています。このニック·セーガン氏は、カールセーガンの2番目の奥さんとの子供(ちなみにCOSMOS1980のアップデートパートや今回のCOSMOS2014制作、そしてカールセーガンと共著「はるかな記憶」のあるアン・ドルーヤンさんは3番目の奥さん、とややこしい)なのですが、現在SF作家をやってます。翻訳が出なくて著作はまだ読んだ事が無いのですが、彼が原作を手がけたコミックがヒラリー・スワンク主演で映画化、という話題も一時期聞いておりました(立ち消え?)。しかし、何より興味深いのは、彼はTNGシーズン7で2本、VGRシーズン5で5本の脚本を担当しているのです。

TNG シーズン 7
第160話「混迷の惑星ケスプリット」"Attached"
第174話 「怨讐の彼方に」"Bloodlines"
VGR シーズン5
第98話「偽造された地球」 "In the Flesh"
第107話「ブラックホールと共に消えた恋」 "Gravity" with Bryan Fuller
第112話「崩壊空間の恐怖」 "Course: Oblivion" with Bryan Fuller
第115話「憎しみはコロナの果てに」 "Juggernaut" with Kenneth Biller & Bryan Fuller
第118話「過去に仕掛けられた罪」 "Relativity" with Bryan Fuller & Michael Taylor

改めて振り返ると、なるほど天文学者の息子、そしてSF作家ならではの、マニア感と言うか一癖あるエピソードが多いなーと思ったりします。

さて、こちらをご覧ください



火星には”カールセーガン記念基地”というポイントがありまして、NASAのマーズ・パスファインダーの着陸地点を現在こう呼んでいるのですが、スタートレックENTの最終回の1個前のエピソードにて登場しちゃいます。22世紀の火星には記念碑が建っているのです。ローバーもちょこんと。

 ・・と、ついついここまでながながと書き散らしてしまいました。
かくのごとく、COSMOS体験はいまだに私の原点であり、脳みその中心核付近に鎮座する不滅の内宇宙として、かに星雲のパルサーのように回転ビームを放ち続けているのであります・・

2015.04.18

CopyRight:OfficePart2(Carbondice) since2005:: part2>:: contact>