サイバーパンク考になるはずが ただの昔話となってしまってゴメン
映画「ストレンジデイズ」より
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While the Earth sleeps
Deep Forest
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ピーターガブリエルが ディープフォレストにエスニック音源扱いでサンプリングの刑を受けた結果 聖なるサイボーグ化した 音楽のサイバーパンクです。
「ニューロマンサー」は ピーターガブリエル主演の映画化の企画があった・・
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さて 以下は 思いのほかダラダラと超長くなってしまった「サイバーパンク考」であります。
「サイバーパンク2077」の興奮も冷めやらぬ中 とある発言
「ブレードランナー2049つまんなかった。全然サイバーパンクじゃなかった。」
というのを見かけまして
「 マトリックスや攻殻以降の視聴者からすると そういう感想かもしれんが
ブレードランナーはサイバーパンクじゃないから。 ディックだから。
サイバーパンクは ギブスン&スターリング以降なんで
論理的にブレードランナーはサイバーパンクじゃないんで。悪いけど。 」
ということを どやっとさらっと書こうと思い 書き始めてみた・・はいいが
事はそう単純ではないという泥沼にズブズブと引き摺り込まれ
なんか すっごい長文になってゆき
ミッチもサッチも行かなくなりはじめ・・・
やっとのことでここまでまとまった(のか?)ですが その場任せの雑文の集合体となった。
私は評論家ではなく そんな高級機能は私には付いてはおらず
これは たかだか一人の男が たまたまどういう読書ルートを辿ってきたか というささやかな一例の意味しかなく。
その上で こんな昔話の徒然に多少でもご興味があれば 気楽に見ていってくれればと思ふ。
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さてまずは SF作家フィリップ・K・ディック から手を付ける必要がある。
ディックは超多作であり 翻訳もけたたましい量が出ており
ここではいちいちリスト化しません。 wikipediaを見てもろて。
独断偏見的ピックアップ:
・高い城の男 1962年
・火星のタイムスリップ 1964年
・パーマー・エルドリッチの三つの聖痕 1965年
・アンドロイドは電気羊の夢を見るか? 1968年
・ユービック 1969年
・スキャナー・ダークリー (暗闇のスキャナー) 1977年
そして難解な3部作
・ヴァリス1981 ・聖なる侵入1981 ・ティモシー・アーチャーの転生1982
ディックの影響力は強力であり あらゆる物書きに甚大なダメージを与え
あのルグインもギブスンも影響を受けている(とwikiに書いてある)。
我が国でも一時期 立て続けに和訳文庫化され 多くの方が手に取った。
わたしの学生時代なんぞ 出るたびに購買部の文庫コーナーに平積みされていた様な有様。
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「暗闇のスキャナー」 飯田隆昭版
「暗闇のスキャナー」 山形浩生版
「スキャナー・ダークリー」 浅倉久志版
みんなあまりにも「スキャナーダークリー 」が好きすぎて 翻訳が3バージョンもある。
ここまでしてもらえる本も珍しいのではと思う。
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SF全盛期時代の裏番長的存在のディックであるが
以下では サイバーパンクについて考えるスタートとして重要とおぼしき3冊に絞って雑文を書いております。
いわゆるネタバレではありますが これ等は真の古典ですので その基本情報に触れる事から得られる糧は ネタバレだなんだとくだらないつまづき時間の浪費より よっぽど有益でしょう。
そして危篤にも「読んでみようか」と 心に仄かな炎が灯った方!
ディックはこの程度のネタバレ如きでびくともせんのです。 ぜひどうぞ。
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「パーマー・エルドリッチの三つの聖痕」1965
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地球は超温暖化世界と化しており 人々は他の惑星への移民を進めている。
物語舞台は火星で 植民者たちは過酷な生活を強いられている。
彼らの日々の慰めは パーキーパット人形(PP)の模型セットで構築したVR空間に没入し 束の間の現実逃避を楽しむこと。
没入するには ブースト薬の ”キャンD” を服用する必要がある(要するにドラッグ体験)。
一つの体に同時に三人がダイブしたりするのが面白い。
模型セットは課金制でww さまざまな小物を追加購入することで ジオラマを発展させることが可能。
火星植民者たちはすっかり 追加アイテムや”キャンD”への 課金地獄にはまってしまっている。
”PPレイアウト社”の思う壺である。
そこへ突如 ライバル製品が出現する。
パーマー・エルドリッチなる人物が プロキシマ星への旅から帰還したのだが
その直後から市場に "チューZ" なるドラッグが出回り始める。
"チューZ"は ”キャンD”の様にVR空間へダイブする機能を持つのであるが
その際 PP模型セットの様な課金フィギュアを必要とせず
服用するだけで 地球へ帰還したりの擬似体験が 自在に楽しめる。
ばかりか 過去へ遡ったり さらには過去を修正できるかも的な欲望まで誘発するすほどの 威力・混乱を引き起こす。
実は ”チューZ”は パーマー・エルドリッチの思考力が領域展開する擬似空間に 人々を引き込むための罠であった。
奴が限りなく作り出すパラレルワールドでは なにが現実か虚構かの区別は不可能であり
”チューZ”の効果が切れて脱出できたのか そう見せかけたバーチャル世界に依然囚われたままなのか・・
一度つかまると 決してその不安から解放されない 逃れられない。
そして読者にもわからない。(「イノセンス」でやったのがこれである)
パーマー・エルドリッチの正体は
地球ープロキシマ間のどこかで 人間パーマー・エルドリッチに取り憑いた 宇宙の何らか 邪神的な何からしい。
ある種の追放者だとの仄めかしもされる。
”チューZ”世界は そいつの存続・繁殖のための仕組みなのである。
ディックは 一つの小説に細かいアイディアを詰め込みまくるが
例えば ”時間倍音”。
弦楽器の倍音の様に 時間的に複数の位置に同時に存在する ぼんやりと並行して存在する状態のことで
ある時点では死んでいても 別の局部時間では存在している みたいな事を指している。
もうこういう単語だけでご飯が美味しい。
”チューZ”使用者にとって 聖なるパーマー・エルドリッチは 三つの聖痕を帯びているのだが
・金属製の右腕
・スチール製の義歯
・盲目の目にはめられた広角レンズスロットの義眼
まさにサイボーグ的機械化人間である。
かくのごとく ディックのこの「パーマー・エルドリッチ」の時点ですでに
VR空間へのジャックイン
他者の精神へのダイブ
体験している世界が 現実か虚構か 創作物か編集済みか
サイボーグ化された聖者
”キャンD” と "チューZ" どっちを飲みますか?
これらサイバーパンク的パーツが すでにこの時点で ほぼフルセットなのである。
パーマ・エルドリッチの聖痕は右腕だが
ジョニー・シルバーハンドの聖痕は左腕である。
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「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」 1968
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映画「ブレードランナー」の原作として燦然と輝き
人間そっくりのアンドロイドとそれを狩る賞金稼ぎ という強力な物語構造の原型。
地球は放射能まみれであり 他の惑星への移民が進んでいる定期。
残存する動物昆虫は超希少であり
これらを所有飼育する事は ステイタスかつトップレベルに尊い行いとされている。
ミミズでさえ極度に大切にされる
一方で より人間に近い存在であるはずのアンドロイドが 非常にひどい扱いを受けている。
世界大戦の放射能で 人間の知能がどんどん後退し続けている
一方で アンドロイドは年々バージョンアップし 新型が高性能化していく。
こういった世界設定に 本当に 本っ当〜にっ 唸らされる。
そしてしかし・・なんである。
「電気羊/ブレラン」は 以上の様な 人間/アンドロイド、生命/模造動物 的な部分を摘んで紹介されることが多いのであるが
「サイバーパンク考」という観点からは そんなことよりももっと大事なポイントがある。
地球に残された落伍組の人々は 心の平静・感情のコントロールを テクノロジーに頼っている。
この装置 ”ペンフィールド情調オルガン”は 千数百のチャンネルを持ち
これを装着すると 希望・通勤意欲・まったり・自虐的抑鬱・・みたいな感じで 自分のお好みの感情をダイヤルセットすることが可能なんである。
人々は 日々を乗り切るために このデバイスに頼りきっている。
また彼らは ”マーサー教”という信仰を持ち
”共感ボックス”という装置で 聖者マーサーの体と精神に ジャックインする!
取手付きブラウン管モニターという レトロな感じの装置なのであるが
これがオーバーテクノロジー的な機能を発揮する。
マーサーは 石を投げられながら登坂し続け 墓穴世界に落ち また一から登坂を始める という受難サイクルを繰り返すが
接続者たちは 彼の受けるこれら苦行を バーチャル追体験することとなる。
マーサーに接続している全アクセス者は 一つの体に精神融合する複合像となり 喜怒哀楽の感情を共有する。
(登坂苦行的モチーフは「火星のタイムスリップ」にも)
また マーサー教徒は 何か良い事があったりすると 共感ボックスでその喜びの感情を分かち合うのが義務だったりする。
この 聖なるバーチャルコンテンツは スタジオで三文役者を使って撮影されたフッテージであることが暴露されるのだが
真実はさらに形而上的な地点にあり 終盤にてデッカードとマーサーの融合の場面がある。
これら ”ペンフィールド情調オルガン” ”共感ボックス” 等は
「パーマー・エルドリッチ」の パーキーパットVR的なる物を継承するガジェットであり
のちの「ニューロマンサー」の”スティムデッキ”=「2077」で言うところの”ブレインダンス”
あるいは もはやあきたりな用語と化した ”ダイブ” 的なものに連なる原型である。
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余談1
こんなものが存在。
ブレードランナー2、3(確か4がいまだ未訳・・)
いずれも おっちょこちょいな物語で
2は タイレル社がなんであんな変な形の建物なのか という話なんである。そこ??
3では 持ち運び型ロイバッティーが登場。ディックガジェットの”持ち運びドクター”のような扱いであるww
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余談2
映画「ブレードランナー」は
ヴァンゲリスのハーモニカサウンドが聞こえてきたりの雰囲気が最高なんであるが
ゲーム「サイバーパンク2077」では
車のラジオ”ロイヤルブルーラジオch”で マイルス がかかるのである ^^。
事件を解決した後は ラジオをこのchに合わせ ボロ車でナイトシティーのアパートへ帰ってゆくのがおすすめだ。
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Generique
Miles Davis - Ascenseur pour l'échafaud
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「死刑台のエレベーター」ですね。
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Black Satin
Miles Davis - On the Corner
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私の車ではなぜかオンザコーナーばっかかかる・・
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「ユービック」 1969
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”ユービック” の名は 神の遍在:ユビクイティ ユビキタス からきているが
物語では 反エントロピー能力を噴射するスプレーとして登場し
敵の ”逆行作用”:時間退行攻撃 に対抗する強力な武器であり
後にデスストランディングの世界線にも転生する アイドル的アイテムだ。
これがユービックスプレーだっ!
”ホリス異能プロダクション” という悪役組織が存在。
テレパス プレコグ(予知) パラキネシス(念動力) ティープ(覗き屋) 達を抱え
諜報・裏工作活動等のサービスを提供。
一方 主人公たちは ”ランシター合作社” に所属
反エスパー組織であり 良識協会傘下の良識機関であります。
反プレコグ 反テレパシー 反念動者 などの集団でして
超能力者の活動を探知し 力場を中和する能力で敵の活動を無効化する。
・・とくれば 否が応でも Xメン的な超能力合戦アクション活劇 を期待するところだが
全くそうならないww
ランシター合作社は 敵の罠にハマり
社長ランシター氏は死亡
作戦に参加した11人の反エスパー隊員たちは 辛くも危機を脱した・・
と言うのは フェイントで
実は 生き延びたのは社長の方で 11人の隊員全員が死亡
生きてると思ってる方が幻覚で 実はあんた等全員死んでるんだよ! エェッ?! という
ディック真骨頂。ディック節全開である。
「ユービック」世界では
死亡寸前の者は 安息所:モラトリアムという施設に担ぎ込まれ
ほぼ死亡だが意識だけは繋ぎ止められている状態:半生者:ハーフライファー という状態で 冷凍保存室に保管される。
彼らの意識は 擬似空間を彷徨う状態にあり
隣に横たわっている人と意識が混線したりするのも面白い。
彼らとは会話が可能で 外部からアクセスして接続することができる
遺言の協議や会社経営の相談なんかができる。
そして 結局は徐々に弱っていき やがては亡くなる運命である。
物理学的っぽい説明が一応あって
彼らの意識は 霊子と呼ばれる素粒子的な場として存在しているらしく
反霊子と対消滅するらしい。
ディックがやりたいのは
自分が死んでるのか生きてるのか ここが現実世界なのかVRなのか わからなくなってくる怖さ面白さであり
そのための舞台が安息所である。
敵の攻撃で死んだのが 社長一人なのか 11人の反エスパー隊員たちの方なのか
冷凍されてるのはどっちなのか。
物語クライマックスでは 強力な半生者が正体を表し
巨大ヴァーチャル空間:都市一つ丸ごと を展開
同じ空間に誘い込んだ半生者たちを 一人づつ弱らせて始末していく。
真の敵は 商売敵のエスパー組織ではなく
冷凍保存者空間にいた 一人の悪魔のような青年の意識で
彼の 逆作用能力:物の形態の中に内在するそれ以前の段階へ後退させる能力:組み立てられた物の時間を巻き戻してしまう能力:エントロピー増大能力のようなもの で 半生者たちを餌食にするのだ。
そして ユービックスプレーは それに対抗するバーチャルウエポンなのだ。
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これで ディックの代表作三冊の大雑把な紹介終わり。
ここまでの時点ですでに 色々なことが判明したかと思う。
ブレードランナー 攻殻・イノセンス マトリックス・・
この方たちを構成する幾つかの部品 しかもかなり核心的な部品が
すでにこの段階で おおむね揃っていること
肝心な部分の多くにおいて ディックがコア部品であること
お分かりいただけたであろうか。
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そして
いわゆる ”サイバーパンク小説” と呼ばれてるものは さらに後の時代の産物なんである。
”サイバーパンク”は 発症後もさまざまに広がりを見せ 現在もしぶとく生き残っているカルチャーであるが
ギブスン&スターリング という 2個イチで語られる作家によって始まった。
”サイバーパンク小説”とは ぶっちゃけこの二人のことである。
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「ニューロマンサー」 1984
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スプロール3部作の第1作
スプロールとは ニューヨーク〜アトランタあたりの ひと続きの都市群構造らしい。
ケイスとモリイの物語
ケイス: 腕利きコンソールカウボーイ 要はハッカー
モリイ: 指先に10枚のブレードを仕込んだ女子 3部作通してのスター
二人の冒険譚
闇クリニック蔓延る千葉シティー 北米スプロールでの大企業襲撃 夜の街ナイトシティー 軌道上スペースコロニーの狂気の一族
マトリックスとは 輝く論理の格子:ロジックラティス 共感覚幻想 電脳空間 サイバースペースである。
カウボーイはコンソール(操作卓)を操りマトリックス空間を飛ぶ。
小説「ニューロマンサー」とは要するに
棺桶ホテル 富士エレクトリック 三菱ジェネティック ガイジン ヤクザ シュリケン ニンジャアサシン ニンジャクローン 日立ポケットコンピュータ ソ連製ICE 対ロシアウイルス ドーム闘技場 ヤキトリ 社歌 成田 オリガミ 新円:ニューイェン O=S:オノ=センダイ製デッキ_サイバースペース7 ホサカ・コンピュータ ソニーのモニター 活線ライブワイヤ センダイ_ダーマトロード:皮膚電極 ザイバツ アイスブレイカー アカイ製_貫皮トランスダーマルユニット サンヨーの真空スーツ 日本製宇宙ヨット_ハニワ 富士通造船所 月面コンクリート 左耳の後ろのカーボンソケットに刺すマイクロソフト 識閾下サブリミナル能力 擬験通信:VR視点共有 パンサー・モダンズ:テロリスト ラスタファリアン:ドレッドヘア宇宙海賊 センス/ネット ラグランジュ5スペースコロニー 円環体トーラス 紡錘体スピンドル 集合体クラスタ ティスィエ・アシュプール:TA連合体 一族クローン化 自由界フリーサイド ヴィラ迷光:ストレイライト ROM人格マトリクス ファームウエア構造体
である。
これらが マシンガンの弾の様に読者に降ってくる。
このこと自体が最も肝心な要点で ストーリーはどうでも良い(こらっ!)。
・・ストーリーです。
この世界では AI が賢くなりすぎることが恐れられており チューリング機構という組織が監視している。
そんななか 強力なAI「冬寂」:ウインターミュート が登場
「冬寂」は自由を求めており
もう一つのAI「ニューロマンサー」と合体して マトリックスの海へ解き放たれたい願望。
物語はあれこれの末 唐突にも ケンタウルス座からの通信:AIの存在を仄めかして終わる。
ストーリーの未整理感もあり 「読みにくい」なんて散々言われたが これでいいんである。
「ニューロマンサー」は間違いなく 「こんなもん初めて読んだぜ すげーぜ」 であった。
ストーリーよりも世界観が命。ハッタリが命。
本作がサイバーパンクの始まりを告げる鐘であり それは結局 新しいスタイル、ファッションがお披露目されたという事だった。
(細かくは短編「クローム襲撃」の方が先行だが 後でチラッと書きます。)
ここで確立されたのは ”サイバーパンク”と分類される見た目姿 なんである。
そしてここには ディック的深みはない。 ねーんである。
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カウント・ゼロ 1986
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ターナー マルリイ ボビイ という三人の主人公の 3つのパートの物語が並行して描かれる。
合体AIのその後が描かれる。
TA崩壊後のスペースコロニー”中核”は ウィレクという老人のものとなっており
ウィレクの本体は ストックホルムにある細胞の塊で 今にも死にそうであり
中核のAIと合体しようとしている。
そのためには ミッチェルという天才技術者のバイオチップ技術が必要だ。
(・・こんな感じで合ってます?・・)
ターナー パート
技術者の引き抜き、というか強奪を生業とし
生体工学者ミッチェルの (有)マース生命工学から ホサカ社への ”企業離脱” を請け負う。
飛行中のホバーカーからの奪取作戦の場面は まんま「2077」のクエストの一つとして再現されてる!
マルリイ パート
美術品ディーラーのマルリイは ジョセフ・コーネルの”箱” の出所を追う。
やがて 中核のクローン一族生き残りレディ3ジェーンが 一族の記憶の断片を箱に閉じ込めさせていることを発見。
ボビイ パート
ボビイ・ニューマーク:カウント・ゼロ
新米カウボーイのボビー少年は サイバー空間でアンジェラと出会い やがて友達に。
二人のストーリーは 次回作「モナリザ」に続く。
ミッチェルの娘アンジェラは 父ちゃんが生体チップを脳に埋め込んだ子供という身の上で
素のままサイバー空間に出入りできる能力を発動。
ブードゥーボーイズたちはこれを 聖母”聖処女” として崇めている。
他にもサイバースペース上には多くのデジタルブードゥー神が存在し 「2077」でも類似の描写。
「カウントゼロ」は「ニューロマンサー」の舞台を引き継ぎつつ
現実・仮想の不安みたいなところに若干踏み込んだ感覚もあり ディックみが香る。
スティム:擬験 や 人気のスティムスター女優の存在が面白い。
スティムは 「2077」で言うところの”ブレインダンス”:BDであり
ディックの”共感ボックス”やPP人形ごっこである。
人々は娯楽として 録画され編集された他人の五感情報を体験する。
さて「カウントゼロ」も 相変わらずとっ散らかり感が拭えない小説ではありますが
今作は 全体的に詩的な雰囲気が良い感じで 3部作の中ではこれが一番好きです。
(こういう発言は「帝国の逆襲が一番好き」的な気恥ずかしさも少々・・)
気づき始めるのは・・
ギブスンの世界観は サイバースペース 巨大都市 ハッカーカウボーイ サイボーグヒロイン 等々と
一見パーティーチックでチャラいイメージであるのだが
裏側では とても内向的な精神が走っており(まあノワールってそういうもんかもしんないが)
サイバースペースの幾何学的空間にひとり没入していく行為だったり ジャックイン中はずっと担架に縛られているみたいな情景が
かえって内へ内へ閉じていく感覚 内向感孤独感。
その感覚が ジョセフ・コーネルとシンクロする。
さて コーネルについてはこの小説で初めて知り 好きになり 写真集を買ったりすることとなった。
この人は ひたすら小物を箱に閉じ込め続けた人で 作品はみなこんな感じ。
ICチップの中に封じ込められた人格の虚像 的なものを見てしまう・・
これらを見ていて ふつふつと湧き上がるものがあり
サイバーパンクでは「ネットは広大だぜ」的な座標系を提示してきますが
一方で「実際は一つ一つの小さなICチップの中に閉じ込められたデータで マトリクスはその集まりに過ぎない」という極座標視点も もう一つの真実なんである。
実際に箱を作るハード屋の視点は ソフト屋とはまたちょっと違った 箱視点的なる座標系にも共感する。
このあたり AIに対するソフト屋の興奮気味な勇み足に対し いまいちノリの悪いハード屋の冷笑 とも少しダブる・・
コーネルの作品はみな 怖いくらい内向的であり
大きな声で「これが好き」と公言することが ちょっと憚られるまであり ヒヤヒヤ。
しかし である!
考えてみれば これもコーネル的行為なのである! おめーらも同じなんである。
お前もコーネルにしてやろうか!
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「モナリザ・オーヴァドライヴ」 1988
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タイトルのモナリザは 登場人物のモナからきており 作中モナリザは一度も登場しない。
今作にいたっては 4パートの並行ストーリーと化しており とっ散らかり方にさらに磨きがかかってしまっている。 読みずらい はっきり言って・・
新旧のキャラクターがカッコよく活躍し 前2作の積み残しが回収されていく感じのストーリー。
・ヤクザのオヤブンの娘:谷中久美子の逃避行
・ドッグソリテュードという荒地の工場パート ボビイが再登場
・大人になったアンジェラ 今はなんとスティムのスターとして活躍
・薄幸の女子モナが 芸能スカウトにひっかっかり... ハラハラストーリー 実は巨大な陰謀が...
クライマックスは 「2077」で言うところのアウトランド:ノーマッド編で
荒地でのホバーカー対ヘリのチェイスアクションや 廃工場での銃撃戦 カウントゼロのサイバースペース無双。
逆に今作は スペースコロニー的な舞台の広がりはない 地球上を駆け回る混線ドラマ。
シリーズのヒロイン10枚刃のモリイがいい所をさらっていき 超かっちょいいかったり
ロボット大暴れは 待ってました感だったり
ヤクザの抗争をさばく谷中は 今後はアラサカサブロウの声で脳内再生されることが決まりました。
印象に残っているエピソード断片のモンタージュが走馬灯する
・・が すまん実はあまり良く覚えていないすまん・・
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スプロールシリーズとは結局 大雑把には 次の様な世界観の話だったかと思う
・・
スペースコロニーに住まう気が触れた貴族一族が作ったAI:冬寂とニューロマンサー
いろいろの末に合体し野に放たれたことで マトリックス自体が自我を持つ
やがて ケンタウルス座の別の知性:AIの存在に気づき それを追っていく
その過程で分裂したAI断片は ネットの中の神々としてマトリックス空間を跋扈している
・・
スプロール3部作は 3作セットで1つのサーガとなっているのだが
1作目「ニューロマンサー」の段階ですでに ギブスンワールド自体はほぼ完成しており
「とりあえず1作目だけ読めば全てわかる が 3作は繋がっているので全部読むと非常に楽しい」
系。 そんな認識で十分な気がする。
説明なしテック用語の洪水 ジャパニーズなエキゾチック 大量のかっこいい字面のシャワー。
このスタイル カタルシスが ギブスンであり
物語構造自体 ストーリー構成自体は なんと言うか とっ散らかりまくってると言うか
はっきり言ってそこはあまり気にする必要がない小説? こんなこと言っていいかわからんが。
とにかく かっこいいが全て カッコいいが正義なのである。
ノリに身を任せていれば いつの間にか読み終わってるんである!
なぜみんな ディックは何度でも読み直すけど ギブスンは今更あまり読み直さないの?
に対しては 「それはそう」 で十分だろう。
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余談
「2077」は スプロール3部作の地球パート部分を再解釈ソート整頓した すばらしい映画化(ゲーム化)であるが
欲を言えば 宇宙パート・スペースコロニーパートが ちらっとしか無いのがやや残念で
この部分は原作からごっそり抜けている。・・のですが でもそこまで望むのは手前勝手でしょう。
この超膨大な作業の産物、巨大な架空世界が 我が家に平然と存在できているだけでも 大変な事態だと思う。
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次は ブルース・スターリング について。
ブルース・スターリングのサイバーパンクは
ほぼこの二冊で全てである(日本の文庫の場合)。
「スキズマトリックス」
「蝉の女王」
この「工作者/機械主義者」シリーズの 長編と短編集の二冊。
この二冊で燃え尽きている。 燃え尽きてしまった。
スターリングは ”アイデアが泉” 系の人であり
「スキズマトリックス」は ものすごい分量のアイディアが 一冊にみっちり詰め込まれている。
アイデア先行で突っ走り ドラマは後を追ってハァハァついてくる感じがする。
ギブスンは 三冊に引き伸ばされて麺が伸びてしまったが
逆に「スキズマトリックス」こそ 3分冊の大作にして じっくり描くべきだった。
絶対に大傑作になったはずだと思う。 今だにそう思う。
この小説は チャラい単語というよりかは 難しげな用語が連発される系であり
当時この本の挑戦を受けて立つ読者側も 難儀しながらついていった。
これが最先端です。ちゃんと読みなさい。読むのが義務です・・みたいな雰囲気なもんだから
自分にとってスターリングは当初 楽しむものと言うよりかは ついていかなければならないものだった思い出。
この辺りのことが作中で繰り返し言及される。副読本。 ついていく方も気合だ。
「混沌からの秩序」イリヤ・プリゴジン
「存在から発展へ」イリヤ・プリゴジン
「宇宙をかき乱すべきか」フリーマン・ダイソン
「宇宙・肉体・悪魔」J・D・バナール
(スペースコロニーには オニール型の前にバナール型というのがあってだな・・)
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「スキズマトリックス」 1985
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未来の人類・・ 人体の改造進化に関して2大勢力に分かれていがみ合っている。
資本主義か共産主義か的な 2派閥の対立
・生体工作者: 生命工学によって人体を改変するバイオ派 小惑星帯に本拠地
・機械主義者: アンドロイド化・ロボット化による進化を主張する派 土星リングに本拠地
の対立がある。
一方 物語序盤 主人公が関わっているのが
・維持主義: 綺麗な体で生き綺麗な体で死ぬ権利
まあ学生運動みたいなものである
生体工作者と機械主義者は デタントつまり休戦状態に入っていくのだが
その原因が 外宇宙から来た貿易勢力の圧倒的存在である という大仕掛けがさらにおっかぶさってくる。
この宇宙には 人類以外にも19の異星種族が存在するんである。
あれ? これはいわゆる わしらが大好きなオールドスクールのSFではないかい? どこが新しい?
物語は 主人公の人生を通したかなり長い時間軸を扱っており 彼の主義志向も変化してゆく。
舞台も・・
月面軌道上の荒廃したスペースコロニー群
小惑星帯の洞窟都市
土星リング上の都市国家
異星人<投資者>の恒星船
・・
などと目まぐるしく展開。
序盤のアクション オニール型コロニーにて 見上げた側の面からギャングがアンカーを射って来て それがコリオリの力でギューんと曲がってずれて着弾するところとか マジで映像化すべきだし ガンダムでやるべきだ。
終盤の見せ場は 主人公とライバルのVRでの決闘である。 アムロとシャーみたいなもんである。
とにかく場面転換の連続 舞台設定が次々めまぐるしい 奇々怪界な世界たち。
「急ぐな急ぐな!」と何度も言いたくなる。
本当に 三冊くらいのちゃんとした長編にして欲しかったなあ。
・・サイバーパンクの話をせねばならなかった。
なんで スターリングがギブスンとセットでサイバー「パンク」と括られるのか。
それは このシリーズが
「テクノロジーでどんどん人体改造進化していこうや! いやほっといてもそうなるっしょ!」
という 超ラジカルな未来社会を透視し確信した小説だからである。
短編の方では 火星表面に残存する 落ちこぼれの”旧人類(わしらのことだ!)”は 虫ケラの様に爆撃駆除される。
数百万年前に人類と分岐したゴリラさんを我々は虐殺しているが そんな感覚を連想する。
<ロブスター>という ご想像通りもはや人の原型をとどめない方たちや
建物全体が肉で構築され壁中に目があるという姿と成り果てた知り合いのおばさん など
いくところまで行った感じも恐ろしい。
ちなみに
芸者銀行 キツネ 歌舞伎バブル・・といったサイバーパンク味全開の小道具もお約束装備である。
スターリングのサイバーパンクは
ついていくのが難しい非情さ 人間を捨てる感 に満ちている。
ストーリーでも やるかやられるかの物語の中に非人間性が見え隠れして 感情がざわざわする。
非情といえば バクスターのシリーズも あまりにも遠未来の 現在とかけ離れた人類を描く非情さがあるのだが
こっちはなんかさっぱりしている。
宇宙天文学的な非情さなのが さばさば感、考えても無駄感を醸し出す。
スターリングのは 人間を捨てて機械になる感じ バイオのぐちょぐちょになって人間を捨てる感が ダイレクトにキモいんである。
だから やはりスターリングはとっつきにくいのであろうと思う。
とことん変なことが好きな人間としては とことん面白いのであるが
しかし とてもいやーなものを見せられている感は 終始つきまとう。
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さて この様に サイバーパンクには B面もあるのである。
A面:ギブスンサイドばかりコンサートで演奏されて
B面:スターリングサイドは全然やってくれない
現在のいわゆる”サイバーパンク”アートは A面サイバーパンクで
サイバーパンクにはB面もある事を知っておいても良いだろう。
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ここまで ギブスンの「スプロール」シリーズ スターリングの「工作者/機械主義者」シリーズを見てきた。
ギブスンもスターリングも これらの作品でほぼ燃え尽きた 書きたい事は全て書いてしまった感。
サイバーパンク運動は 急速に終わりを迎えた。
終わった? というか サイバーパンクは 溶けて広がっていったのだと思う。
もはや 情報テクノロジーが全ての人にとって身近になった現在
あらゆるアートに サイバーパンク的なるものが自然に溶け込んでいるのが 現在なのではないかと思うんだ。
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まとめ
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サイバーパンク小説:ギブスン&スターリング自体には
ディック的苦悩・・自我とは何か 現実と仮想は区別可能か・・といった思考回路のないパンクである。
「ブレードランナー」は ディックの原作なのだが
偶然か 時代の必然か ギブスンのビジュアルをまとっていた。
そして 映画やアニメとしてのサイバーパンクは ここが震源地となったため
以降のサイバーパンクアートは
ギブスン的ビジュアルと ディック的苦悩
両者を装備したキメラアートとなった。
そして今や
PCでバーチャルリアリティー 外部記憶は超大容量 高校生でも人工知能・・な世界となり
ディック的苦悩はテクノロジー化し すぐ隣にある問題と化し
より現実 より切実となった。
だから今 サイバーパンクは帰ってくるのである。
ギブスンのほぼほぼ完全映画化インタラクティブ化である「2077」にさえ 今日の作品としてディックの魂が見え隠れし 深みとなっている。
2020年代のサイバーパンクとして。
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えーと・・ まとまったかな?
こんな感じで どっ どうでしょうか 。
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長い付録・・
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時系列年表である。
初めは自分用のメモであったのだが ここに貼っておいても良いと思い 色々写真も貼ってまとめてみた。
大雑把で雑だが 流れを確認するのにはまあまあ役立ちそう。
そしていつのまにか サイバーパンクの話というよりは SF昔話になってしまった。
とあるおじさんの昔話です・・
(データはほぼwikipedia頼みである・・)
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[ フィリップ・K・ディックの時代 ]
1964
「パーマー・エルドリッチの三つの聖痕」
1978
海外SFノヴェルズ
1984文庫版
1968
「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」
1969
ハヤカワSFシリーズ
1977 文庫版
1969
「ユービック」
1978 文庫版
[ サイバーパンク始動 ]
1981.5
小説「記憶屋ジョニー」 ウイリアム・ギブスン
OMNI(アメリカのポピュラーサイエンス雑誌)1981年5月号
これがいわゆる”サイバーパンク”の始まりと認識されている。
のちに「JM」として映画化。
1982.6.25
映画「ブレードランナー」
アメリカ 1982年6月25日
日本 1982年7月3日
1982.7.9
映画「TRON」
アメリカ 1982年7月9日
日本 1982年9月25日
OMNI1982.7号より
1982.7
小説「クローム襲撃」 ウイリアム・ギブスン
OMNI 1982.7月号
1982.12
漫画「AKIRA」連載開始 大友克洋
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★ つまり
ブレードランナー/TRON/クローム襲撃/AKIRA は
1982年の世界同時多発現象。
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1984.1.22
Apple 1984宣言
リドリー・スコット監督のテレビコマーシャル
パソコン革命宣言「コンピューターの力を全市民の手に!」
1984.7.1
小説「ニューロマンサー」 ウイリアム・ギブスン カナダ
1984.12
小説「クローム襲撃」が
日本版OMNI 1984.12/1985.1 の前後編で登場。
私含め大多数の日本のSF読者が
この時初めて ”サイバーパンク” とファーストコンタクト!
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科学雑誌「日本版OMNI」について・・
「日本版OMNI」 1982.6創刊〜1989.4終了
スペースシャトルの時代を迎え
科学番組・科学雑誌ブーム到来。
まざまな雑誌が創刊される中 「日本版OMNI」は最高にクールだった。
米国版の姉妹紙だが 日本独自の記事がかなり多かった。
創刊号から廃刊まで 一冊も欠かさず手にした月刊誌というのは 私はこのOMNIだけです。
テック系の記事やスペースコロニー、サイボーグなどの話題が盛り上がる雑誌だった。
ジャパンアズNo.1の時代であった。
さまざまなSF短編小説
「ニューローズホテル」ウィリアム・ギブスン 1985.12号
「パパの大きな娘」 アーシュラ・K・ル=グイン 1988/12
単行本
こういうカッコいい面白い雑誌が再び現れる未来はあるのだろうか・・
やがて科学雑誌ブームは急激に失速。
OMNIも終盤は 糸川英夫先生を編集長に置き コア層以外にも手に取りやすい感じにイメチェンするなどの手をうつ
・・が 結局は長く続かなかった。
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1985
小説「スキズマトリックス」 ブルース・スターリング
1986〜1989
日本語訳文庫が次々と
「ニューロマンサー」 1986. 7.15
「カウント・ゼロ」 1987.9.20
「クローム襲撃」 1987.5.10
「スキズマトリックス」 1987.12.10
「モナリザ・オーバードライブ」 1989.2.15
1988.7.16
映画「AKIRA」
1988「サイバーパンク・アメリカ」 このようなガイド本まで出た。
1989.5.20
小説「蝉の女王」 ブルース・スターリング
私はこの短編集で ようやくスターリングが理解できたような気がした・・
1989.5
漫画「攻殻機動隊」
連載 1989.5〜
単行本 1991
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1982〜1991あたりが一番わちゃわちゃしていたと改めて思い出される。
今にして思えば「日本版OMNI」とも同期している。
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1995.4
映画「JM」
1995.8.24
Microsoft Windows 95
英語版 1995年8月24日
日本語版 1995年11月23日
大学が理科系だったり電気系の会社勤めだったりの特殊層以外は 多分ここで初めて ネットすなわちパソコンとウェブブラウザに出会うこととなった。
1995.11.18
映画「攻殻機動隊」
1999.3.31
映画「マトリックス」
アメリカ 1999年3月31日
日本 1999年9月11日
この映画は ものすごい一撃だった。
その後続編たちは微妙な評価となっていくが・・
この辺りで サイバーパンクは失速し始めた感がある・・
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余談ですが こんなことも思い出される。
1991
「内なる宇宙」 ジェイムズ・P・ホーガン
日本版1993
「巨人たちの星」シリーズは ホーガンのなんとも微笑ましいSFシリーズで ファンも多いが
今作は「巨人ちゃんたちの星でバーチャル生命体が悪さをしているぞ!地球人類さんなんとかして!」
1997
「ファウンデーションの危機」銀河帝国シリーズ グレゴリイ・ベンフォード
日本 単行本1999(上は文庫版2004)
銀河帝国は 発掘されサイバー空間に逃げ込んだ電脳人格:ジャンヌダルクとヴォルテールに翻弄される。
どちらも出た時に それぞれのシリーズのファンが
「なんだよサイバーパンクかよ」 と揶揄 愚痴ってたのを思い出す。
この辺りですでに サイバーパンクは徐々に 古い物ダサい物扱いされ始めた感・・
ちなみに 私は面白く読んだ。
ほんとうにたまたま 人生の進路として電気情報工学系を選択し
ネットやAIといったテーマがわりかし身近であったことが要因と思う
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そして徐々に サイバーパンクはフェードアウトしていった。
そもそも ギブスンとスターリングの二人が その後あまり盛り上がらない。
一発屋とまでは言わないが 息が続かない感。
「サイバーパンクは結局 SF小説史の流れの中で しっかりとしたムーブメントを確立するには至らなかった」的な総括もちらほら散見され始め。
その後も何冊かは出ているし 翻訳されてないだけ的な部分もありますが。
そして SF小説自体から離脱していった人は 多分このタイミングの人たちが多い。 多分。
わたし自身はその後もSF小説をそれなりに読み続けた。
しかし白状すれば
この頃はもう 時代はノンフィクションの方がよほど面白いフェーズに突入していたんである。
世の中も 自分も。
でも3Bは読んだ。 ベンフォード ベア ブリン 。
そしてバクスターも。
和訳が出なくなるまで読み続けた。 出なくなるまで・・(涙)
やがて襲ってくる 相次ぐシリーズ完結。
1999 「エンディミオンの覚醒」 ダン・シモンズ
2001 「ファウンデーションの勝利」 デイヴィッド・ブリン
2003 「星界の楽園」 デイヴィッド・ブリン
2003 「真空ダイヤグラム」 スティーブン・バクスター
(なんの因果か 覚醒、勝利、楽園、そして真空という流れが哀愁漂う・・・)
・・
そしてついに クラーク が終わる。
2011年 「火星の挽歌」 クラーク&バクスター
終わった・・ 何もかも・・ 祭りは終了した ・・
読むものが 無くなった 。
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いや 終わっちゃいねー!
現在 2022年10月
なんと”サイバーパンク”が我が家に帰ってきてる。
あのやろう居間でくつろいで NETFLIXなぞをだらだら見ていやがる。
放蕩息子の帰還である!!
2022.10.11