Log

Cyan『Firmament』

これをやっています。



『Firmament』 Cyanの新作ゲームです。

Cyan Worldsは  1987年にランド&ロビン・ミラー兄弟が作ったゲーム会社で  なんと言っても『MYST』が有名である。



『MYST』は当初 AppleつまりMacと一心同体の存在であった。
Macとは『MYST』ができるパソコンのことであった。おおげさでなく。
Macとはマルチメディアコンテンツ『MYST』が実行可能なパソコンなのであった。

================

かつて ”マルチメディア” というもの在りけり。
雑すぎて首を絞められそうな言い方お許しあれ 要するに紙メディアに代わる新形態の出版物:CDROMの事である。
パソコンで文字・動画・音声をインタラクティブにさわれる 書籍や雑誌の未来の形。
人々があたりまえのように書店やパソコンショップでCDROMを買っていく未来がもうすぐやって来る と夢想された時代があった・・そうならなかった。
パソコン持ってる人がまだそこまで一般的存在ではなかった。
そういう意味ではレトロフューチャーっぽい存在で この運動は”昭和平成が考えた21世紀の未来”として静かにフェードアウトしていった。
時代は変わり やがてweb全盛時代。
マルチメディア的なるものは webブラウザ上のコンテンツやアプリへ姿を変え 動画付きニュースサイト・Youtube・ゲーム・・さまざまな形体へと分化発展し広がって 現在に至る。

===

以下 取り出しやすい場所にあったものだけでもちょっとご紹介。 発掘すればもっと出てくるのですが 雰囲気だけでも伝わればよし。
”マルチメディア”は大まかには Quicktime・オーサリング環境Director・CDROMメディア により起動した。
最盛期には 実にさまざまなアート作品、ゲーム、電子ブック的なものが次々に登場。
動く絵本の様なものから もっとインタラクティブで複雑なものまで 多種多様であった。


『SINKHA』 1995
3DCGソフトSTRATAで作られたかっこいいSFグラフィックノベル。
STRATAといえば『MYST』だったですが これも素晴らしい。

『XPLORA1』 1993
『eve』 1996
ピーター・ガブリエルはこの様なものに常に積極的である。



『Ceremony of INNOCENCE グリフィンとサビーヌの不思議な文通』
ここに極まれり。ピーターのREALWORLDからの出版。


その他 大作から小作品までまだまだたくさん・・

===

CDROMの時代は あっという間に終わる。


Director そして Flash

MacromediaFlashの時代がやってくる。
静止画ペタペタのホームページをインタラクティブコンテンツへと変貌させた革命である。
ベクトルデータのプログラミング操作はPC上の映像表現を強力におしあげた。
そこいら中Flashだらけとなった。
そんな中 私はFlashの向かう方向はインタラクティブな3D表現の方向と思っていた。
MYSTワールド的なものがWebブラウザ上で3D空間としてアクセスできるような状態がゴールだと思ったのだ。 というか そんなwebが見てみたかった。


インターネット博覧会2001
堺屋太一先生総指揮という体の元 政府主導のホームページ博覧会開催。
後年の評価的には 成功したイベントとは見做されていない。
博覧会入口表紙のFlashが 当時のご家庭のPCではとにかく激重で 超不評だった。
一方で各パビリオンの方ではインタラクティブ系はそんなに多くなく そんな中で私のFlash出展物はわりと喜んでもらえました。

やがてFlashはいよいよマルチメディアオーサリング化・オブジェクトプログラム化していき 多機能化、混乱、ブクブク太ったキメラの様なアプリと化していった。
全盛期 企業ページはどこもかしこもFlashだらけ。
そしてFlashと3D表現が合流。ゴール。
Blenderの登場がデカかった。 高機能フリーソフト。
そしてFlashはその途端 滅亡の時を迎えた。
Adobeに買収されたあたりで雲行きは既に怪しく 太りすぎた巨体を持て余す恐竜の様な セキュリティーが穴だらけのどうにもこうにもならないオーサリングソフトに成り果てていた。
手の施し用がなく Web世界から追放された。
この時代 バブル崩壊のダメージが長い遅延の後にじわりはじめ 電気系会社の整理統合が進んだ時代ともなんとなく並行する。

===

そして次なる潮流。
大容量の動画がもはや自在に閲覧可能となり 軽さが要請された時代の工夫であったベクトルデータ操作やインタラクティブコンテンツは過去の遺物となった。
タブレット・スマホ時代 PCいらない時代
「リッチな動画が出せるんなら そもそもそれが一番いい めんどくさいことはいらん。」
最もオーソドックス・最も歴史の古い ”動画コンテンツ” に回帰した。
時代は巻き戻ったと言わせてもらう。

===

そして 今? YoutubeやTikTokやが全盛時代 それと並行してじわじわ始まっている動きがさまざまある様に感じます。
それらはインタラクティブ性を取り戻したアートコンテンツ復活のきざしに見えますが・・


================

[ MYST ]

『MYST』の話がしたいんであった。 ちょっと話を巻き戻して・・
始まりは1991年 アップルは”QuickTime”を発表。
パソコン上で動画が動き始めた。「何てこった!」
私の就職先は電気屋さん系だったので 職場にAppleがあった。
机の上はNECかIBMかワークステーションかという中で やんちゃな新顔的存在のMacは 印刷(ポストスクリプト)や画像データをいじくる部隊の装備品として少数支給されていた。
この辺りの仕事に関しては当時はMacの独壇場だった。
わたしは近い位置におり ちょいちょい触る事ができた。
QuickTimeが動いた時は 1台のMacに人垣ができたのを覚えてる。
たしか160x120くらいの画像だったか.. みんなの見守る中 カクカク動き始めた。 「おー」というどよめき。
あの瞬間がマルチメディア出発の汽笛が鳴った瞬間。
時は流れYoutube全盛の現在に至るパソコン動画時代の扉をひらいた その原初のオギャー。

そしてすぐに『MYST』がやってきた。
ミラー兄弟はすでに Appleの紙芝居アプリ:ハイパーカードで作った『マンホール』という作品で有名でしたが
『MYST』は超問題作で ショックに近い形で迎えられベストセラーとなった。
ざっくり言えば 綺麗なCGで描かれた想像世界の中をさまよい 各所に配置された難問パズルの謎を解いていくゲーム。
真のクリエイティブがあった。
”STRATA”という3DCG制作パソコンソフトによる 当時としてはびっくりレベルの映像美。
基本的には静止画による紙芝居的な画面を行き来する構成なのですが 動画を要所要所で巧みに使用。
限られたデータ容量・限られたピクセル数の中 ここぞというポイントでゲームの世界観を広げる。
BGM・SEに超こだわったのもクレバーで 少ない容量の中『MYST』の豪華感を醸し出すことに成功 戦略的勝利。

今で言う”PCゲーム”とはだいぶ意味合いが違う存在だったかもしれない 思い返せば。
まず たいていの自宅にMacはない まだ。 職場にしかない。
『MYST』は 職場のお昼休みにお弁当食べながらプレイするゲームなのだ!
そして 何日もかけて難問パズルを解く。
仕事中や電車の中、お風呂や寝る前に突然 ! 解法がひらめいたりする。
そうやってのんびりと進めていくゲームだった。
あのパズルの難しさは そんなプレイスタイルにまさにぴったりだったのです。

===

[余談] Macが切り開いた パソコンで3DCGの時代



STRATA3d
3DCG制作アプリに庶民の手が届く時代の到来。
それまで映画でしか見たことなかった3DCGが 職場や自宅のMacでモデリングとかレンダリングとかで遊べる夢の時代到来。

ShadePersonal:それまでShadeは超高級品で アキバでは棚の高いところに鎮座し鍵かかってたりした。それがこれで一気にお手頃価格に。
LIGHTWAVE3D:コンシューマ向けとしてはものすごい高性能だった。

そして時は流れ今やBlenderの時代。なんちゅう恵まれた時代だろうかと思うよ。

===

[ MYSTシリーズ ]

ミラー兄弟はその後 MYSTシリーズを次々に生み出すことになる。



『RIVEN THE SEQUEL TO MYST』 1998

2作目にして難問レベル頂点。 鬼畜のごとき不親切パズルが容赦無く 脳髄が破壊される。

===


『MYST III EXILE』 2001

『MYST』はパソコン者なら知る人ぞ知る人気ゲームとなっており
今作は ブラッド・ドゥーリフ が出演・怪演してくださっており。
うまくGoodエンドに辿り着けば 彼の素晴らしい演技で涙涙のエンディングを迎えます。

===


『MYST Uru: Ages Beyond Myst』 2003

本作の人気が厳しい結果となり MYSシリーズ終わりへのきっかけとなった。
当初はオンライン参加型パズルという野心的チャレンジでしたが 投資がデカすぎたらしく。
ルックや操作方法など 今までのMYSTからかけ離れたゲームとなっており ファンが離れたと思われる。
当時の荒い技術ではありますが 3Dモデリングされた広いマップを3人称視点で自由に歩き回り 3Dモデルならではの自由度の高い新アイディアのパズルたちを次々解いていく とてもチャレンジングなことをやっており 私はめちゃくちゃ面白いゲームでした。
物語はとても深く広くものすごい情報量で MYSTとD'niの世界観を一気に押し広げた。
でも 『MYST』のファン達は 一人称視点で美しい風景画像の中を探査し超難解パズルをじっくりのんびり解いていく という世界観をあまりにも愛していた。
この『Uru』の豹変ぶりは受け入れ難かった。


この辺りの書籍と連動している。
もはやSFとして素晴らしく ランド氏がいかに壮大な構想を持って MYST世界・地底文明D'ni世界 を作ろうとしていたかがわかる。
構想は構想のまま終わった。
シリーズも続くはずだったし 映画化の計画もあった・・

===


『MYST IV REVELATION』 2004

もはや 実写CG融合系の大作ゲームと化した。
アトラス夫婦の娘イーシャがかわゆく活躍。
ピーター・ガブリエルが持ち曲提供。 いよいよ終盤の激ムズパズルにもがき苦しむ中での一服の清涼剤となっております。
(ピーターただいまワールドツアー中です!元気そうでなにより。)

===


『MYST V: End of Ages』 2005

これで終了。UIに新趣向が取り入れられ面白い部分であったが 全体的には残念な品質のゲームであった・・

===

そして 長い空白期間がやってくる。

===

[ Cyan復活 ]

2016年 『Obduction』 を突如リリース。キックスターター。
MYSTシリーズではない新規IP。
そして紛れもなく”MYSTの魂”の宿ったパズルゲームであった。
2018年にPS4版も出ました。
PSshopにて ランド・ミラーさんの素晴らしいインタビューが見られます。
「ゲームはもっと多様でいいはず。」

本作は 謎のパワーによりモザイク化し絡まり合ったワールドを紐解いていく といったパズルとなっており 頭を壁に打ち付けたくなってくるヤヤコシさ。

===

そして今作 『Firmament』

まだプレー路半ばであります。


例えばこの様に微細で美しいCGだったりしますが 正体は激ムズパズルです。
まともに解こうとしても どうしても解けなかった。
そしてようやく気づく。 まじか!。 意地悪にも程がある。
せっかく購入してくれたプレーヤーに対する鬼畜の所業に ニコニコしてしまう。



あてずっぽうではなかなか道はひらけず 業をにやし始め 結局はこのようなメモをとり計算し始める羽目になってゆく。
この間むしろゲーム自体は立ち上げていないまである。
わたしは今何をやってんのか? PCゲームってなんだっけ?

そして一山越えるとまた立ちはだかる壁。
只今絶賛つまり中。 みっちもさっちもいかん。
「パズルが解けない」という以前に「一体何をすれば良いのかが全くわからない」。 要するにいつもの「MYST」である。
何を見落としているのか? 何の思い込みが我の目を曇らせ世界を正しく認識できなくさせているのか?
疑問と不安を抱えつつ ひたすらファーマメント世界をうろうろし続ける毎日です。
このフェーズに入った時はジタバタしても始まらないです。
レコード聴きながら テレビ見ながら のんびり探索し続けます。

やがて 一個のひらめきをきっかけとして 突然一気にゲームが転がり始める瞬間が訪れます。 必ずです。 それがCyanなんです。


2023.05.25

===

追) 「最後に言うな」で恐縮ですが・・
本作『Firmament』ですが 特にCyanが初めてだったりする場合はですが
おすすめ・・しません! できないんである。
今んところバグが多い。
(以下省略)

追 2023.06.10)
発売当初はバグが多く これでCyanのこと嫌いにならないで〜という気持ちも有り 現状お勧めしづらいという結論となっておりましたが
その後パッチ修正で順次改善され 安心してプレイできる感じになってきてる様であります。


もしもミラー氏の作るゲームに興味が湧かれた方は 今作『Firmament』をやってみるのも良いですが まずは原点の『MYST』を触ってみるという手もあります。
これで合う合わないがある程度わかると思う。
古代遺物の様なゲームではありますが 今やさまざまなプラットホームからさまざまなリニューアル版で出ており 非常にゲットしやすいです。
そして万が一はまった場合は 今作『Firmament』をやってもいいし MYSTシリーズを順番に攻略していってもいいかも。
奥深い世界に絡みとられ 抜け出せなくなることでしょう。






CopyRight:OfficePart2(Carbondice) since2005:: part2>:: contact>